[温故知新 有田焼先人陶工たちの足跡を訪ねて]
有田焼創業四百年を迎え、有田焼の原点を知ろうと、いにしえの陶工達が
辿ったであろう場所を訪ね、当時の陶工達の苦労を想い、有田町近郊に
散在する、有田焼の原料採掘地へ会員による探訪を行っています。
有田を囲む険しい山々、人びとの入山を拒むかのような濃い緑の森に分け入り、
道なき道を進んだ先に現れたのは、泉山の白く美しい岩肌に刻まれた、
わが国初の、磁器製作への情熱を感じさせる、無数のノミ跡。
その硬い陶石を砕いて陶土を作るために猿川の清流に穿つった唐臼の柱の穴。
そして、有田焼の釉薬に欠かせない原料である白川山土を掘り進んで巨大な洞窟となり、
そこに住み着いた、愛らしく有田焼の図柄に吉祥文様として登場する蝙蝠の一群。
それはまさしく先人陶工達の足跡であり、
現代へと続く有田焼四百年の歴史そのものではないでしょうか。
いまは訪ねる人もなく忘れられ、遺跡となりつつある、それらの地は
先人達の息づかいを感じる事が出来る、とても神秘的な空間でもあります。
———– 髙森誠司 記 ———–
高森誠司(有田陶芸協会監事)